
将棋アプリといえば、まず真っ先に名前が挙がるのが「将棋ウォーズ」だろう。
長年にわたってオンライン将棋の定番として君臨し、プレイヤー人口・運営ノウハウ・AI技術のどれを取っても盤石。
そんな将棋ウォーズに対し、新たに登場予定の将棋アプリ「棋桜(KIOU)」が話題になっている。
「将棋×キャラクター」という切り口での差別化。
果たして棋桜は、将棋ウォーズの牙城を崩す存在になり得るのだろうか?
まず前提として、散々文句を言われているが将棋ウォーズの強さは異常と言っていい。
•将棋AI研究の世界トップランナー
•マッチング・不正対策・レーティング設計の完成度
• 将棋そのものを邪魔しないUIとテンポ
将棋ウォーズは「派手さ」はないが、 将棋を指したい人にとっての不満が極端に少ない。
結果として、多少不満はあっても、結局ウォーズでいいという状態が成立している。
この牙城を正面から崩すのは、資本力・技術力ともに相当な覚悟が必要だ。
棋桜が選んだ道は、将棋ウォーズとは真逆とも言える方向性だ。
• 世界観や演出を重視
• 将棋をゲーム的体験として再構築し初心者の敷居を広げる
なるほど、確かに発想自体は理解できる。 将棋そのもので殴り合うのは分が悪い。
ならば別軸で勝負、という判断は合理的だ。
ただし、この路線には明確なリスクがある。
「将棋×キャラ」で勝負する以上、 イラストは最も手を抜いてはいけない部分になる。
ところが、公開されているビジュアルを見ると疑問がある。
• どこか生成AIイラスト的な平均化を感じる
• 将棋経験者が見ると、駒の持ち方や所作に違和感がある
といった印象を受ける人も少なくない。
「これってAIイラスト?」のような声もちらほら見かけられる。

例えば上のイラストは王手が掛かった時のカットインだろうか?
キャラの駒の持ち方に違和感が有り、将棋を指す人ならばこのように指す人はほぼ居ないだろう。
AIイラストは手の表現が苦手だから、適当に生成させただけなのでは?と勘繰ってしまう。

対してこちらは将棋ウィーズのTwitterのアイコンのイラスト。
漫画「将棋めし」の松本渚先生の描かれたイラストで、指先の力強さや微妙な駒の傾き具合は、将棋を分かってる人ならではの表現だ。
棋桜のイラストがAI生成かどうか私には分からないが、
「将棋ゲームを開発してるチームなのに、この違和感に誰も気づかなかったのか?」という疑問が浮かぶ時点で、やや不安が残る。
将棋は、駒の向きや手の動きといった細部に敏感な文化だ。
私は羽生先生の溜めてからくくっと指す感じ(分かる羽生ファンなら分ってくれるはず汗)が大好きで、実際の対局でも勝負手を放つ時には自然と真似てしまう。
なので、この違和感のあるイラスト1枚で評価を下げてしまう層は間違いなく存在する。
もし雀魂のようにキャラクターガチャを導入するなら、なおさら厳しい。
• 作者性やフェチの偏り
•「このキャラを使いたい」
ガチャが回るキャラには上記のような感情的動機が必要だ。
「可愛いんだけど、別に回さなくていい」この評価が一番危険で、課金モデルが成立しにくい。
将棋は思考時間が長く、キャラを眺める時間も多い。
平均点のキャラは、むしろノイズになりかねない。
さらに厳しいのが、運営母体の差だ。
将棋ウォーズを運営するHEROZは、AI将棋研究のトップランナーであり、長年の実績と資金基盤を持つ。
一方、棋桜の開発は比較的無名のベンチャー企業。
挑戦そのものは素晴らしいが、技術•信頼•運営体力の面で、スタートラインが大きく異なるのは事実だ。
ここまで懸念点を多く挙げてきたが、新しい将棋アプリが登場すること自体は、将棋界にとってプラスだと思っている。
• 新しい遊び方への挑戦
• 将棋に触れる入口が増える可能性
これらは間違いなく価値があるし、
私は短い持ち時間しか採用していないウォーズ運営には不満があり、棋桜が10分30秒を採用してくれるのは凄く嬉しい。
もし棋桜が、将棋へのリスペクトを丁寧に積み上げ、キャラや演出を「将棋体験を補強する方向」に磨き、ユーザーの声を拾いながら改善を続けていけるなら、時間をかけて独自のポジションを築く可能性はある。
結論として、棋桜が将棋ウォーズの牙城を短期間で崩すのは、かなり難しいと思う。
ただし、将棋×キャラという挑戦や新規参入ならではの柔軟さには、まだ可能性が残されている。
現時点では不安要素も多いが、それを一つずつ解消していけるなら、
「将棋ウォーズとは違う居場所」を持つ将棋アプリになれるかもしれない。
将棋を愛する人間として、 新しい将棋アプリが成功してくれること自体は、素直に期待したいし応援したい。
棋桜がこの先どんな進化を見せるのか。
将棋界に新しい一手を投じてくれる存在になるかどうか、しばらく静かに見守りたいと思う。
