
注意)本記事は「タコピーの原罪」のネタバレを含んでいます。
まず、『タコピーの原罪』におけるタコピーの過ちを一言でまとめるなら、
「人間を理解しないまま、善意だけで介入してしまったこと」 です。
◆ もう少し詳しくいうと…
タコピーは「ハッピーを届ける」という使命感で動いていますが、
彼のハッピーはあくまで自分の星の価値観に基づいたものです。
だから、しずかちゃんのような心に傷を抱えた子供を前にしても、
表面的な「笑顔」や「ごっこ遊び」だけで問題が解決できると思ってしまった。
彼が使う道具―記憶消し、タイムトラベル、変身など―は、
いずれも「便利だけど、責任を取れない力」なんですよね。
結果的に死者を出し、過去を改変し、誰の人生も良くしなかった。
たとえば記憶消しを使ったせいで、しずかやまりながさらに孤立する展開を加速させてしまった。
タコピーは「助けたい」という気持ちは本物でした。
でも、それが相手を傷つけたり、状況を悪化させたとき、善意だからといって正当化されるわけではないんです。
これは人間社会の倫理の難しさであり、「原罪」というテーマに繋がっています。
「原罪」というタイトルにある通り、本作は「誰もが生きていく中で知らず知らずに罪を犯してしまう」という構造を描いています。
タコピーだけでなく、しずかも、まりなも、しずかの両親も、みんなそれぞれ罪を抱えている。
→ 理解せずに関わること
→ 善意で他人の人生を変えてしまうこと
→ 責任を持てない行動を繰り返すこと
そういった「無垢ゆえの罪」だと考えると、非常に重く、切ない作品ですよね。
これは単なる性格の変化や知識の獲得ではなく、「善意が他者にどう影響を与えるか」を痛感し、自ら責任を取ろうとしたことです。
■ 成長の3ステップで見てみましょう
「みんながハッピーになればいい!」
→ これは、タコピーが自分の星の常識や価値観でしか物事を見ていない段階です。
この段階では、
・記憶を消して嫌なことを無かったことにする
・タイムマシンで過去を改変しようとする
といった「表面的な解決」に終始しており、 それが逆に悲劇を深める結果になります
決定的なのは、しずかの死と、まりなとの関係の悪化です。
この時点でタコピーは、「自分が関わることで誰も救えていない」「むしろ、壊してしまった」と気づく。
ここで初めて、彼は自分の行動の重さに向き合い始めます。
→ それまでは「間違えたら記憶を消せばいい」と思っていたが、それが取り返しのつかない結果を生むことを知る。
最終的にタコピーは、自分が地球のルールを破って道具を使い、命を奪ったことを認め、法に従って罰を受ける決断をします。
これが最大の成長ポイントです。
◎ 自分のしたことの責任をとることで、2人の未来を守ろうとする。
これはまさに、幼稚な善意から「大人の覚悟」への変化です。
タコピーの成長は、
「何が正解か分からなくても、人の痛みに向き合うことを諦めなかった」
「責任から逃げずに、自分の行動の重さを受け止めた」
という、人間的な成長に他なりません。
彼はエイリアンだけど、「人間として一番大切なこと」を学んでいったんですよね。
原罪とは、知らずに犯してしまった罪です。
タコピーは最初から悪意で動いていたわけではない。
でも無知で、無責任で、未熟だった。
それでも彼は罪を罪として自覚し、贖おうとした。
そこに、この物語の希望と救いを感じます。
